コルポ建築設計事務所

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黒いスペーサーに注目してください

樹脂スペーサー
 
なんのことを言っているかというと上の図にあるようにペアガラスというのは、2枚のガラスがサンドイッチされています。そのガラスがサンドイッチされた部分にこれまでは、アルミのスペーサーが使われていました。いや、現在も使われています。アルミの熱伝導率は、樹脂に比べて1000倍熱を伝えやすいので、どうしてもそこから熱が逃げやすくなってしまいます。
 
そこで登場したのが、樹脂のスペーサーになります。この樹脂のスペーサーにすることで、窓の断熱性能がよりあがることになります。ですので、この部分にアルミが使われているのか、樹脂が使われているのか、今後は気にしていただければと思います。これがシルバーであればアルミのスペーサーですし、黒ければ樹脂スペーサーということになります。これは見た目の色だけで判断できるので、そんなに難しいことではないと思います。ちょっと普通は気付かないようなところにも配慮することで、窓の性能はあがることを知っておいてもらえればと思います。
 
もちろん、私が計画する住宅については、この樹脂スペーサーを使用したサッシを標準仕様としております。
 

2015.02.14

日本の窓には最低基準がなかった!?

窓の最低基準
 
昨日は、ヒルズサンピアで行われたエコ住宅シンポジウムに参加してきました。基調講演は松尾設計室の松尾さんだったのですが、講演を聞くのは二度目でしたので、うんうんと頷きながら聞いていました。そんな中、あらためてビックリしたことがあったのですが、それは日本の窓の基準には最低基準がなかったとういうことです。上の表は、日本経済新聞 電子版の松尾さんの記事からお借りしてきたものです。これが世界各国の窓の断熱性に対する最低基準ということになります。
 
表中のUw値という欄にいろいろな数値が書かれておりますが、これが窓の断熱性能を示す「熱貫流率」という数値になります。単位はW/㎡(平方メートル)・Kで、1㎡当たりかつ1時間当たりに通す熱量を表しており、数値が小さいほど熱の出入りが少ないことを意味しています。熱の出入りが少ないので、そのほうが窓としての性能が高いことになります。こうやって、各国の最低基準をみていただくとわかりますが、窓としての性能が一番低くてスペインの2.1~2.8というU値なのがわかると思います。
 
しかし、日本には窓の最低基準がないために、どんな窓でも使用可能な状態です。いわば、野放しということでしょうか。そのため、よくあるアルミニウム製の枠に一枚のガラスを使った窓は、U値が6.5W/㎡・Kと、とんでもなく低性能な値ですが、今もこうしたタイプの製品を販売することが許可されているということなんです。私からすると、そんなサッシを生産する意味もすでによくわからないのですが、最低基準がないために、実際にそういう窓が取り付いている家があるということになります。窓からの熱の出入りは全体の5割近くにのぼるため、非常に重要な部位なのですが、そこが野放し状態だということを建て主の方も理解していただければと思います。
 
なぜ、このような状況なのかはわかりませんが、サッシというのは、一見するとその形状だけでは、どんな仕様なのかわかりにくので、これから住宅を考えている方は、是非サッシのこの数値(U値)を確認していただければと思います。
 

2015.02.13

太陽光の活かし方

日射利用
 
太陽の光をどう活かしていくかは、高気密高断熱の住宅ではとても大切で、冬期間の暖房エネルギーにも大変影響してきます。ですので、太陽の光を設計にきちんと反映させることが必要です。
 
山形市の北緯を38度15分とした場合、南中角度は以下の式で求められます。
 
<夏至> h=90-38.25+23.4=75.15(度)
<冬至> h=90-38.25-23.4=28.35(度)
<春分・秋分> h=90-38.25=51.75(度)

 
このように、夏は高い位置から太陽が差し込み、冬は低い位置から差し込むことになります。夏の日差しを遮ってあげることで、冷房負荷は下がりますし、冬は日差しを入れることによって、暖房負荷を下げることになります。
 
上の図は、Casa Montañaの断面図になりますが、大きく南面に開けられた開口部は、冬の日射はきちんと取り込みますが、夏の日差しはきちんと遮るように考えてあることがわかると思います。なので、たとえば、外出する時など、できるだけカーテンを開けて外出していただければ、昼の間に太陽の熱を取り込んでおけるので、その後の夕方からの暖房エネルギーの軽減に役立つことになります。
 
こういうことは、今までのなんちゃって高気密高断熱では隙間も多くあるため、そのようにならないのですが、エコハウスやパッシブハウスと言われているようなレベルの住宅では、きちんとそういう管理ができるようになります。ですから、多少断熱材にお金がかかったとしても、その後のエネルギーの削減効果を考えると、充分もとがとれることになるはずです。そして、何よりエネルギーをより使わなくなることが、地球環境にとっても、お財布にとってもうれしいことです。
 

2015.02.04

床下暖房とは

床暖房という言葉は聞いたことがあるかと思いますが、床下暖房という言葉は聞いてことあるでしょうか。床暖房というのは、床の表面を直接あたためるので、ふれている部分はあたたかいのですが、そこからはずれてしまうとすぐに冷たく感じてしまいます。それに対して、床下暖房は、床下の空間をあたためて間接的に床をあたためながら、床下の暖気を室内にめぐらせることで家全体をあたためる方法です。絵であらわすと以下のようになります。
 
床下暖房
 
この方法は、前々回の方式でいくと対流式になります。対流式のデメリットであったのは、直接風が人に当たることで不快に感じるということでした。今は、エアコンが進化して、足元に風を吹いたりといろいろな機能があるようですが、この床下暖房ですと、風を床下に吹くことになるので、直接人に当たることはありません。対流式のデメリットがカバーされた方式になります。
 
また、前回の方法でいくと全館暖房になります。高い断熱性能をもつ住宅で計画することにより、快適な空間がエアコン1,2台で実現します。冷房の場合は、1階については風が吹く方向を床下から床上に変更することで対応が可能です。2階については、もう1台ぐらいエアコンをいれるか、床下に吹いた冷気をファンで2階に持っていくか等の方法が考えられます。
 
 
床下暖房
 
 
実際の取り付けたイメージ(伊礼さんによる床下暖房の例)。このように棚などに組み込みながら、目立たないように設置することになります。設計の際には、エアコンの位置なども考慮しながらプラン等を考えていくことになるので、計画の初期段階から検討する必要があります。これからの高い断熱性能を有する住宅は、このような暖房方式が主流になると思います。

2015.01.21

個別冷暖房か全館冷暖房か

昨日に続き、冷暖房の話。家のどの範囲で冷暖房するのかということについて。
個別冷暖房
一般的には上の図のように、各部屋ごとを冷暖房するイメージかもしれません。ところがこの方法ですと、各部屋にエアコンを置かなければいけませんし、部屋以外の部分(廊下、トイレなど)については、エアコンが置かれないため、特に冬場はとても寒い空間になってしまいます。いわゆるヒートショックはこういう空間があるために起こってしまいます。
全館冷暖房
それに対して、家全体を均一に冷暖房しようというのが、全館冷暖房になります。このようにコントロールできれば、ヒートショックの原因となる空間も存在しないため、とても快適な空間になります。全館冷暖房というと、そんなことをしたら光熱費がすごいことになるのでは?とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
 
ですが、実際この全館冷暖房をやるには、高い断熱性能をもつ住宅で計画することになります。ですので、実際には6畳用のエアコンが1,2台で実現してしまいます。光熱費が大変になるどころか、光熱費が節約できる上に家の中の快適性も手に入れることができます。
 
そう考えてくると、これからは全館冷暖房で快適な家を増やすことが、省エネにもなるし、家計にもやさしいということになります。次回は、これまでの話を踏まえての床下暖房についての話。

2015.01.20