『高気密・高断熱』にかかわる数値は2つあり、熱損失係数(Q値)と相当隙間面積(C値)です。これらの数値を確認することで、『高気密・高断熱』の性能の違いが数値でわかるようになります。この数値がわからないと、『高気密・高断熱』であたたかい住宅というおおまかなイメージだけで家を建てることになってしまいます。ですので、これから住まいをご検討される方には、ぜひこの数値をみていただければと思います。
では、実際どのくらいの数値を目指したらよいのでしょうか。上の地図は平成11年に全面的に改正された「次世代省エネルギー基準」で決められた熱損失係数(Q値)と相当隙間面積(C値)の基準値になります。この基準で山形の数値をみると、熱損失係数は2.4で、相当隙間面積は5ということになりますが、この基準は低すぎるので最低の基準と考えてください。
これから住宅を考えている方でしたら、熱損失係数(Q値)は1.3前後を目指していただければと思います。なぜこの数値なのかというと、だいたい山形でこの数値で全熱交換器※をつけると、熱損失係数(Q値)は1.0前後になると思います。予算次第で、性能もよく出来ますが、予算の都合で全熱交換器がつけられない場合でも、これまでの住宅に比べると格段に性能が良くなっているという数値がこの当たりではないでしょうか。
実際に、私が設計したアパートCasa Montañaも当初は全熱交換器をつけていましたが、予算の都合で普通の換気扇に変更することになり、最終的に熱損失係数(Q値)は1.34に落ち着きました。それでも、上下階ともに、エアコン1台で過ごせる性能になっています。
※全熱交換器・・・換気の際、排気する空気から「熱」と「湿気」を給気する空気に戻すことで、換気による熱のロスが少なくなる装置。
『高気密・高断熱』の数値には、もうひとつあります。それが相当隙間面積(C値)と言われる数値です。この数値は家の中に隙間がどのくらいあるかを示すものです。数値が小さいほど、気密性能が高いということになります。
なぜこの数値が大事かといいますと、せっかく高い断熱性能を有する建物でも、隙間がたくさんあり外の空気がどんどん入り込むような住まいでは、全体での熱損失係数(Q値)が下がってしまい、せっかくの性能が生かせなくなってしまうからです。
また、気密性を高くするもうひとつの理由は、換気効率をあげることにあります。窓の開閉や換気扇による換気を計画的にできるようにするためには、コントロールできない隙間風がない方がよいことは理解していただけるかと思います。
気密性が高いと、息苦しさをイメージされる方もいるかもしれませんが、そういうことではなく計画的に空気を入れるために必要な方法として考えてみてください。
それでは、『高気密・高断熱』の数値にはどんなものがあるのでしょう。ひとつは、建物全体の断熱性を示す熱損失係数(Q値)と呼ばれる数値があります。建物の内側から外側へどれだけの熱が逃げていくのかを表す数値です。この数値が小さいほど断熱性能が高いということになります。
この熱損失係数(Q値)は、建物が建てられる場所の気候や周囲の状況、建物のかたち、断熱仕様等を含めて計算して算出されます。ですので、建てられる家が一戸一戸違うように、この熱損失係数(Q値)も一戸一戸違うものとなります。
これから住まいをお考えの方で、あたたかい家を希望の方(大勢の方がそういう住まいを希望していると思いますが)はこの熱損失係数(Q値)をぜひ確認してみてください。
私が設計する際は、予算内でどれだけこの数値を小さくできるかということをまず第一に考えています。
『高気密・高断熱』という言葉は、ほとんどの人が聞いたことがあると思います。住宅メーカーや工務店など、『高気密・高断熱』の文字を掲げていないところは少ないでしょう。ですから、普通は『高気密・高断熱』であれば、どんな住宅も一緒と考えている方が多いのではないでしょうか?
ところが、一口に『高気密・高断熱』と言っても、きちんと数字で測ることができるので、数値が高い『高気密・高断熱』と数値が低い『高気密・高断熱』の両方が存在します。ですので、住宅選びの際には、その数値をしっかり把握することが大切なことになります。